茶室までのアプローチに
凛とした風情が漂う庭。
施主の住まいはたいへん凝った造りで、しかも茶道を嗜(たしな)まれるため二つの茶室が設けられている。庭全体が茶会を催す際の露地(ろじ=茶室に付属した庭。茶庭。)として構成され、あらかじめ蹲踞(つくばい)が庭の南側と北側、室内とそれぞれに組まれている。作庭にあたっては既成の素材を受け入れ、茶室へ入るまでの空間が凛とした落ち着きを促がすよう配慮した。室内と蹲踞を結ぶために飛び石を打ち、雑木と下草との自然な一体感を生みだす。室内からの景に関しても日常を解き放つ静けさを保ち、住まいの延長として庭が存在するようにした。蹲踞、飛び石、垣根、燈篭、植栽、そうした茶の湯の庭を構成する要素をいかにレイアウトしていくか。必然でありながらも野暮にならないよう細心をはらい、さり気なく風情が漂えばと思う。
使用材料および演出物
【樹木】アカワビスケ、アラカシ、カクレミノ、シロワビスケ、スダジイ、イロハモミジ、ガマズミ、ケヤキ、コナラ、ハナミズキ、ベニバナハナミズキ、ヤマボウシ、リョウブ、ヒサカキ、ドウダンツツジ、ベニシダ、ヤブコウジ、リュウノヒゲ、クマザサ、キンモクセイ(既存)
【演出物】蹲踞、燈篭、沓脱石(鞍馬石)、阿弥陀垣根、延段(丹波石)、長穂垣、土間(桜川砂利洗出し)